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痴漢

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ありふれた性犯罪だけに、創作物でも興奮したり不快感を覚えたり 「痴漢」

 「痴漢」 とは、主に男性が同意を得ることなく女性に対して身体に触れるなど、性的行為を強要することです。 朝の通勤通学ラッシュ時の満員電車の車内など、自然と身体が近づく場でのそれが注目されますが (実際に被害が多い)、それ以外にもしつこい ナンパ や付きまといなどで体に触れるなども痴漢行為となります。

 痴漢は、実際に行った行為の種類や悪質さによって、迷惑行為防止条例違反とされるものと強制わいせつ罪とされるものの大きく2種類があります。 ごく大雑把に云えば前者は卑猥な行為とされるものが対象で、暴行にまでは至らないものであり、例えば服の上からお尻や胸、その他の身体を触るなどが該当します。 一方の後者は暴行や脅迫を含むものとされ、服の一部を無理やり脱がしたり下着の中に手を入れる、嫌がる相手に 「おとなしくしないと殺すぞ」 などと脅すものなどが該当します。 刑事罰は前者が長らく罰金刑であったものの、近年は厳罰化が進み6ヶ月以下の懲役 (常習犯は1年未満) となり、後者の強制わいせつは6ヶ月以上10年以下の懲役とかなりの厳罰となっています (その後不同意わいせつ罪も新設されています)。

 一説には女性のほとんどが一度は経験し、あるいは繰り返される不快で忌まわしいものとされ、痴漢に狙われたら女性側から被害を防いだり予防する手段はほぼなく、検挙率も極めて低いのが特徴です。 性犯罪全体の多くを占めるほど 「ありふれた犯罪」 でありながら、対策はまったく不十分だと云えます。 被害が表面化しにくいのは、被害者が性被害に遭ったことを恥じる感情を持ったり、ショックや恐怖のあまり固まってしまって 無抵抗 になる、混乱して自分に非があると思い込んだり勘違いだと思い込もうとする、あるいは痴漢側がおとなしくて気が弱そうな女性を狙う、女性側が被害を訴えにくいタイミング (例えば入学試験日の朝とか) を狙うなど、それなりの打算の元に行われる卑劣な犯罪だからでしょう。

 また被害を受けた側に深刻な精神的 ダメージ を与えながら、加害者である痴漢側はある種の 病的 な思い込みで 「誘惑された」「嫌がらなかった」「喜んでいた」 などと歪んだ認知でしばしば罪悪感すら覚えず、被害・加害感情の釣り合いがあまりにない点も特徴でしょう。 こうした歪みは性犯罪全般に見られることですし、性欲というより加害欲や支配欲によるものとの知見もあり、こうした感覚がわからない痴漢などしない善良な男性であっても 「ちょっと尻を触られたくらいで」 と被害を軽く見がちな部分もあります。 その結果、被害者は二重三重に傷つけられるケースもあります。 とくに 「そんな派手な服を着てるから軽い女だと思われてそんな目にあうのだ」 などは、配慮がないばかりか事実誤認もあって最悪のセリフでしょう (痴漢が狙うのは 地味 で目立たず騒いだりしなさそうな女性が中心です)。

 とはいえ、いざ検挙されたら加害者たる男性の側にも人生が変わるほどの社会的制裁が待っている行為でもあり、それ自体は自業自得とはいえ、関わる人間全てが 不幸 になる、この世から一刻も早く消えて欲しいものの代表でしょう。

同種再犯率が高く、冤罪も生み出す

 一般に性犯罪の多くに常習性があり、あるいは検挙後の再犯率の高さが指摘されますが、実際は性犯罪者の再犯率は他の犯罪に比べさほど高くありません。 性犯罪で服役した後 (出所受刑者) にその他の犯罪を犯すことはあっても、同じような性犯罪を繰り返す例 (同種再犯率) はそれほどではないのですね。 ただし痴漢および 盗撮 の再犯率は高いとされ (痴漢の場合、統計によって違いはあるものの、3割から5割程度もある)、ある種の依存症的な問題もあるとされます。 適切な予防措置と確実な検挙、被害者の精神的なケアが必要なのはもちろん、検挙後の加害者に対する効果的な再犯防止のための取り組みが期待されるといって良いでしょう。

 痴漢が問題となる中で、一方で痴漢冤罪といった問題も近年は注目されるようになっています。 痴漢で検挙されると (それどころか疑われるだけでも) 社会的生命が終わる レベル の大きなダメージを男性は受けてしまいますし、それを恐れて例え無実であっても女性側の言い分を丸飲みして罪を認め示談するしかない状況に追い込まれるケースも可視化されてきています。 当たり前の話ですが痴漢をするような男性は全体のごくごく一部であり、そのような人の犯罪のせいで多くのまともな男性が肩身の狭い思いをするのもおかしな話です。

 近年では痴漢の発生が多いとされる電車やバスの車内などにも防犯カメラの設置が叫ばれたり、朝夕のラッシュ時に女性専用車両が設けられるようになっていますが、痴漢を防ぐためにも冤罪を防ぐためにも、実効力のある施策が求められていると云えます。 そのために運賃が上がったとしても、それに異を唱える人は少ないのではないかと思います。 また被害に遭っている女性がいたらすぐに声を掛けるなど、周囲の乗客らによる協力も不可欠でしょう (さすがにそれだと分かった上で無関心を決め込むような人は多くはないとは思いますし、そう思いたいですが)。

 なお日本は痴漢が多いという意見もありますが、そもそも日本以外の国では男性が女性の身体に数秒間触れるといった行為が性犯罪だと見なされない場合も多く (日本では聞きなれない軽性犯罪の扱いがせいぜい)、概念 や文化を含めた社会情勢自体が著しく異なるため比べられません。

 より凶悪な強姦が人口比で日本の何十倍も発生している国で、日本の痴漢同様の行為が日本より少ないというのは考えにくく、むしろ痴漢行為を性犯罪として厳しく対応しているという状態こそが、日本の安全性の証明をしていると云っても良い状況ではないでしょうか。 女子高生や若い女性が ミニスカート を履いて暗くなっても自由に出歩ける国など、先進国・途上国含めて世界にどれだけあるのでしょうか。 高校生どころか大学生になっても女性がろくにスカートすら履けないような 治安 の国と日本とを比べてもどうしようもありませんし、そのような国が行っている施策をありがたがって日本に導入しようとするなどは本末転倒です。

創作物における痴漢

 男性向けの 18禁成人向け 創作物においては、痴漢行為の描写はとてもありふれた シチュエーション のひとつです。 被害者となる女性視点で描かれるケースが多く、非日常的で背徳的な性描写に対する 需要 は大きいと云えます。

 またほとんどの場合で、現実の痴漢ではまずあり得ない、電車内での挿入や複数人での 輪姦、さらにはそれを女性側も、最初こそは嫌がりながらも途中から快感に見悶え 「おちんちんをください」 などと懇願して受け入れるなど、あくまで ファンタジー のような描き方をするケースが多いでしょう。 場合によっては自ら痴漢を誘って行為に及ばせたり、痴漢OK娘 として積極的に受け入れるような描写がされることもあります。

 エロい作品では強姦 (凌辱・レイプ) や輪姦・乱交・性奴隷・獣姦などなど、ありとあらゆる性犯罪やモラルに反する性行為が描かれますが、痴漢描写はそれらより行為そのものは相対的に軽いものだとしても、ありふれた性犯罪であるがゆえに逆に強い忌避感や嫌悪感を覚えやすいものとも云え、割と苦手だとする 読者 も多いものです。 男性向けエロマンガなどは女性の作者や読者も結構いますが、「痴漢はなぁ…」 みたいな人もそこそこいるとはよく聞く話です。 自身や友人知人の不快な体験の延長線上にあり、状況が容易に想像できたり実感が伴うから、あるいは作中の女性の心理描写が現実とあまりに乖離していることへの違和感からなのかも知れません。

 一方でそれゆえに興奮するという人もいますし、痴漢ものという カテゴリ や様式に落とし込むことで、余計な段取りを経ることなくいきなり性行為の描写ができるなど、作者・読者ともにメリットもあるため、それなりに人気のある ジャンル の一つとは云えるかもしれません (ただまぁ、思ったよりは多くないんですよね、生粋の痴漢ものって)。

痴漢と痴女と、逆痴漢

 一般に痴漢の対義語は、加害者が女性となる 痴女 となりますが、単純に男女を入れ替えただけといった意味で使われるケースは稀で、概念はかなり異なったものとなります。 例えば電車内で女性が男性の身体を触ると云った場合は、痴女よりは逆痴漢みたいな呼び方の方が多いかもしれません。

 理由としては、女性による男性への性犯罪や性加害がイメージしにくくそのための言葉がわざわざ用意され広まってもこなかったこと、逆の場合に比べ行為のバリエーション、事例などにも乏しいため、何でもかんでも痴女と云う言葉に詰め込まれてしまい、分かりにくくなるという部分はあります。 その結果、特定の行為を表現する場合は男性が行う行為に 「逆」 をつけて表現する方が分かりやすいのでしょう。 これは逆ナン (女性がナンパする)、や逆セクハラ (女性からのセクハラ)、逆レイプ (女性が無理やり男性を犯す) などと同様です。

 ただし逆ストーカーとか逆DV などのように、初期のころは女性から男性への加害状況が可視化されず、前述したような理由から一部で俗語として使われてはいたものの、男女平等の 意識が高まる 中で男性側被害も見えてきたことにより、その後は使われなくなったような言葉もあります。 現在ストーカーや DV といった言葉には、加害者側性別の ニュアンス はさほど含まれなくなったと云っても良いでしょう。

 とくに DV (ドメスティック・バイオレンス) については、腕力に物を言わせ相手に大きな傷を負わせるような暴行傷害こそ男性側加害が多いものの、軽微な暴力や極度の束縛、相手の心を傷つける暴言や相手の所有物を勝手に処分するといったモラルに反する行為などは女性が加害者となるケースも多く、とりわけ若年層においては男性を上回るとする調査結果などもあります。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2004年8月10日)
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