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アナログからデジタルへ、時代とともに移り変わる 「画材」

 「画材」 とは、絵画) を描くための道具のことです。

 画材の材は材料のことなので、厳密に云えば道具一般を広く指す言葉ではなく、絵の具などの顔料や絵具、紙やカンバス、消しゴムなどの消耗品をもっぱら指す言葉ではあるのでしょうが、ほとんどの道具が画材屋さんで取り扱っていること、道具がなくては描けず、また道具も長い目で見れば消耗するとの意味から、「絵に使うもの」 ならひと通り画材とまとめて呼ばれるケースが多いでしょう。 またその多くが、文房具、事務用品などとも内容的に重複しています。

 なお マンガ のための道具は、とくに コミック画材、コミック用品 などと呼ぶ場合もあります。

あらゆるものが画材になるという考え方も

 画材として一番わかり易いものは、鉛筆や絵の具、筆、クレヨンや、画用紙、スケッチブック (スケブ)イラストボード (イラボ) などでしょう。 また一般に絵や イラスト を描くためのものとは思われていない筆記具や道具類 (例えば本来は製図用として使われていたような定規やカラス口など)、さらに絵やイラスト描きがアナログからデジタルに広がる中で、パソコンやその関連製品 (グラフィックソフト、スキャナー、ペンタブレットなど) を画材として扱う場合もあります。

 こうした画材でよく使われる代表的な道具や、その道具類の組み合わせには、描くものの種類や カテゴリ によって様々なものがあります。 その一方で、商業的な創作活動における画材の制約 (一般的な 印刷 で利用しやすい画材による表現が求められる) や、コンテストなどの制限から外れた自由気ままな画材の選定も、趣味の創作活動では見られます。

 また壁画のモザイク画に使うタイル片や小石、ビーズ類、粘土や針金なども画材となります。 極論すれば、「色がつけば全て画材」 だとも云え、同人 の世界や前衛的な美術の世界では、いわゆる画材とは認知されていない意外なものを使って、絵画やイラストを描く場合もあります (例えば砂に模様をつける、絵の具や顔料の元となる植物の汁や鉱石、土で直接描く、血液や体液など)。

アナログ画材

 一般的に画材と云われて思い浮かべるのは、アナログ画材と呼ばれているものでしょう。 すなわち、紙や板に何かを描くためのものです。 油絵などですと、布製のカンバスに筆で油絵の具を描くことが多く、絵の具を使いやすく出しておくパレット、筆を洗うための染筆バケツ、ローラーやヘラ (パレットナイフ) などがおなじみです。

 水彩画の場合、画用紙や模造紙、その他の紙に、水彩絵の具を使って描くことになります。 水墨画の場合もほぼ同様の道具類を使って描くことになりますが、それぞれの描く作品によって、それ専用の長い伝統を持つ道具類が存在します。

 一方マンガの場合はこれらの画材に加え、墨やインクで細い自由曲線を描くための各種ペン (Gペンや丸ペン、かぶらペンなどのつけペン先とペン軸、サインペンやマジックペン) と、直線や曲線を正確に引くための製図用の道具 (定規や雲形定規、カラス口、コンパスなど)、さらに模様や影をつけるための スクリーントーン などのデザイン用画材なども加わり、カラー原稿とモノクロ原稿でも、画材を様々使い分けることになります。

デジタル画材

 1990年代から、同人や おたく腐女子 らの界隈で非常によく行われるようになったのは、パソコンによる絵画、イラスト、およびマンガの制作でしょう。 初期の頃はパソコンで絵を描くといっても、画面のどこに点を打つかといった、ほとんどプログラムのような状態になっていましたが、徐々にグラフィックツールとして使えるソフトウェアなども登場。

 代表的なのは、ドットを打って絵を描いてゆく マルチペイメント や、本来は写真加工用のソフトだったにも関わらず、高機能によりデジタル絵描きに愛され続ける フォトショップ、図案やデザインワークに優れた イラストレーター などが人気となっています。 パソコンが本格的に普及すると、手頃な価格でフルカラーのイラストを描くためのソフトなども無料や安価で出まわり、「Pixia」(ピクシア)、「EasyPaintTool SAI」(ペイントツールSAI)、「IllustStudio」(イラストスタジオ) を始め、多くのソフトが人気を集めています。

 一方、パソコンで下書きから 完全原稿 状態にまで簡単にマンガを描くことができる時代となり、マンガ制作専門のソフトウェアなども次々に登場。 「ComicStudio」(コミックスタジオ/ コミスタ)、「ComicWorks」(コミックワークス/ コミワ)、「コミPo!」などがよく利用されているようです。

効率化か独自性か、難しい道具の進歩

 絵やイラスト、マンガの絵画的な進歩は、技法の発展と画材や道具の進歩との二人三脚なのでしょうが、コンピュータを使って絵を描くのが当たり前となったことで、ある意味でアナログ時代とはケタ違いに効率的な絵描きが可能になっています。

 こうした 「飛躍的な効率化」 は、スクリーントーンやコピー機 (複写機) の登場によっても生じていましたが、2000年代のパソコンの普及とグラフィックツールの進歩は、過去類例を見ないほど、絵画やイラスト、漫画の世界に大きな変化をもたらしています。

 単純に作画スピードの上昇だけなら絵の内容に対する影響も間接的なものに留まるでしょうが、同じ絵を何度でも画質劣化なしに拡大縮小・反転して使いまわせる、写真として撮影した風景などを、画像処理でイラスト風に加工して貼り付けることが可能などは、絵作りの根本が変わったとも云え、ある意味で画一的で写実的・無機質な絵作りを促進しているとの批判的な声も聞こえます。

何で描いたかだけではなく、何を使ってどう描いたかが大事

 今後この傾向は拍車がかかるのでしょうが、道具やソフトに使われるのではなく、自分の表現したいものを具体化させる道具として自由に使いこなして、素晴らしい絵作りに活かすことができるといいですね。

 デジタルよりもアナログの方が温かみがある、パソコンによる絵作りは描き手の効率性重視が垣間見えて無機質に感じる、などといった話はよく聞きます。 しかし、小さい子供がパソコンで一所懸命に描いた大好きなお父さんお母さんの似顔絵は、プロが練習のためにクレヨンで描いた抽象画や前衛絵画よりもずっと 「温かいもの」 だと思います。 要するに画材などは単なる道具であって、絵の内容にはほとんど意味を与えません (どんな画材を選ぶのかという時点で、絵作りが始まっているにしても)。

 自分の道具として全てを受け入れる必要はないにしても、食わず嫌いで批判するのではなく、古い道具も新しい道具もそれを愛している人がいるのを理解し、自分の表現世界を広げられると素敵だと思います。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2001年3月12日)
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