同人用語の基礎知識

イナゴ/ 175
イナゴサークル

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人気ジャンルに群がり、後には何も残さない 「イナゴ」

 「イナゴサークル」「イナゴ」 とは、これといった特定の ジャンル を持たず、その時々で旬なジャンル、人気のある マンガアニメゲームライトノベル などの 二次創作 を 「何でもアリ」 で専門に行っている 同人サークル のことです。 数字の語呂合わせで 「175」 とも呼びます。 多くの場合、18禁 の活動をしています。

 あらゆるジャンル、その時々で異なる カテゴリ の創作活動を行う 「何でもアリ」 なサークルには よろずサークル というものがありますが、「よろず」 ではなく 「イナゴ」 と呼ぶ場合には、「金儲けの意図の有無」 が重要な要素で、「おいしそうなジャンルを食い荒らす迷惑な人たち」 のようなニュアンスの言葉となります。

 「よろず」(あるいは 「雑食」 など) を自称するサークルはたくさんありますが、「イナゴ」 は他人が侮蔑・批判的に、そうした活動を行っているサークル、個人を呼ぶ場合に使う言葉です。

 また 「ジャンルをさまよう」 という点で、ジャンルジプシー などと呼ぶ場合もあります。 「ジプシー」(gypsy) とは、ヨーロッパから中近東に存在する移動型の少数民族の俗称で、「エジプトから来た人たち」 といったような意味の言葉ですが、差別的なニュアンスがあるとして、その後は使われることがなくなりました。

単なる 「浮気性」 ならまだしも、175 は 「金儲け」 が目的かと…

 「よろず」 も特定のジャンルにこだわって活動しているサークル関係者や同人 ファン から冷ややかに見られるケースが多いのですが、「イナゴ」 の場合はほとんど 叩く だけの対象となっていますね。 これは、「よろず」 は少なくともその作家がその時点その時点で 「好きな作品」 を取り上げているケースが多いのに比べ、「イナゴ」 は 「人気のあるジャンルなら売れるだろう、人気のある カップリング なら一儲けできるだろう」 なんてのを、かなりあからさまに行動で示しているからでしょう。

 発行する 同人誌 も、どう考えても 元ネタ となる作品をろくに見ているとは思えない内容だったり、原作本の のトレースをして、単に キャラクター を裸にしてるだけだったり、ひどいものになると、明らかに元ネタとなる作品に一切触れていないのが明白の 「勘違い本」 もかなりあります (他人の二次創作をマネているだけ)。 作品を見ていない、きちんと理解できていないので、ディティールもカップリングもめちゃくちゃで、要するに、元作品への が感じられない、愛がない、というわけです。

 「他人は他人」「嫌なら見るな」 と無視すればいいのですが、しばしばこれらのサークルはそれなりに影響力のある、「人が集まる」 サークルだったりしますから (まあ、本を売るための努力をしているのですから当然でしょうけど) 、場合によっては軋轢を生み出したりします。

細く長く続いていたジャンルが、ある日突然 「旬のジャンル」 に、そして…

 こうした人達も、全く新しいジャンルに参入なら問題はあまりないのでしょう。 まだジャンルとしての方向性も定まっていませんし。 しかし人気になるずっと前から細々と続いていたジャンルが、ある日突然、アニメ化やらドラマ化やらで人気となってこれら 「イナゴ」 が乗り込んでくると、「新参ファン」 とともにそれまでのジャンルの雰囲気や空気、ジャンル内のお約束や設定を破壊しまくったりするので、苦手に思う人は多いようです。

 またマイナーな時期にそのジャンルをリードしていたようなサークルが、後から来てブームが去ったら恐らくすぐにいなくなる 「イナゴ」 に押しやられ、お誕生日席 などの一等地的な 配置 を奪われることへの反発もあります。

 また 「イナゴが去った後」 も問題があります。 不必要に盛り上げるだけ盛り上げて、下火になったらそのまま去っていくだけなので、そのジャンルには荒涼とした 「ごみが散らかった祭りの後」 だけが残ってしまいます。 それでも熱心なファンは残るでしょうけれど、雰囲気の悪化で老舗サークルやサークル同士の架け橋をしてくれていた一般参加者が離れてしまったりすると、ジャンルとしての被害も甚大です。

ファン活動の延長としての二次創作と、単なる 「海賊版」

 とりわけ 「イナゴ」 が嫌われる大きな理由として、同人 における 著作権 にまつわるデリケートな問題をことさらに荒立たせ、踏み荒らす点が挙げられます。 というのも、版権もの の二次創作は著作権の上ではグレーゾーンのケースが多く、ファン活動の一環として、著作権を持っている著者なり版元 (出版社やゲーム会社) が 「見てみぬふり」「黙認」 している現状があるのですね。

 本来、「金儲け」 のためにその著作を利用するのなら、正規の版権許諾を得て、商売としてやるべきなんですね。 しばしばこれらイナゴサークルは、一般の同人サークルでは考えられないほどの同人誌などの 頒布数 を売り上げる場合があり (著作権法違反や数千万円にも及ぶ額の脱税などで新聞沙汰になったりもする)、著作権者側が 「見てみぬフリができなくなる」 という状況を招く恐れがあると、心配している同人関係者は多いようです。

 「イナゴ」 はお金儲けが目的ですから、仮に自分たちが引き起こした問題が元で コミケ などで 「著作者の許可のない二次創作は禁止」 になっても、さっさと 「次の金儲け」 に行くだけでしょう。 残された同人関係者は他に行くところがなく、自分たちの楽しみの場を荒らされ奪われ、踏んだり蹴ったりです。 ということで、何かにつけて 「イナゴ」 を叩く風潮があります。

 一方の 「イナゴ」 の側は、「あなた達だって、結局のところ、こちらと同じように許可を得ずに二次創作してるじゃないか」「本が売れないから僻んでいる」「嫉妬している」 なんて反発したり反論したりするケースも稀にあったりもするので、ちょっとこの溝は埋められそうにありませんね。

イナゴに対する男女同人ファンの温度差

 完全に嫌われ者のような 「イナゴ」 ですが、「手っ取り早く夜のオカズになる同人誌が欲しい」 なんて同人ファンが男性の場合には結構多いので、女性ジャンルにおけるイナゴと男性向けのジャンルのそれとでは、結構温度差があったりもするのが面白いところです。

 一定レベル以上の安定した画力で売れ筋の作品のエロパロを継続して 頒布 するサークルをありがたがるパターンは少なくなく、「イナゴの何が悪い」 と主張する読み手が、男性側には結構多いものです。 そもそもイナゴサークルのファンは同じイナゴ (新しい作品ジャンルにすぐに飛びつきすぐに飽きる層) という面もありますし。

 同じ同人の世界でも、男女の考え方の違いからくる差異はいろいろなものがあります。 例えばほとんどの男性向けの同人サイトでは、検索避け とか クイズ制 とかはほぼ存在しないくらい、二次創作に対する扱いが違いますし、ナマモノ 関係を巡る考え方などは、同じ同人ファンとは思えないほど考えが隔たっています。 ここらの感覚の違いは、ちょっと面白いですね。

 一概には云えませんが、女性ファンは ジャンル買い (どのジャンルやカップリングの作品なのかを重視する) が多く、男性ファンは 作家買い (ジャンルは問わず、好きなサークルや作家の本を買う) が多いとは、筆者の周りではよく聞く話です。

 これらはジャンルやそこに関わるファンたちの年齢層、時代によっても変わりますし、男性だって 島買い をするようなジャンル命の人は結構います。 しかしもし客観的にこれらの印象がある程度正しいものなのだとしたら、たいへん興味深い傾向の違いだと云えます。

売れ残った本を、平気で捨てて帰る人たち

 ちなみに 「イナゴ」 さんたちは、旬を過ぎると本が売れなくなるのは知っていますが、夏コミのように申し込み時期と開催時期が大きく隔たっているイベントなどでは、「次はこれが旬だ」 なんて狙いをつけていながら、当てが外れてたくさんの売れ残り、在庫を抱える場合もあります。

 その際、イベント会場 のゴミ箱に自分たちの本を、束のまま投げ捨てて帰ったりするんですね。 これは商売として考えた場合、売れない本は作品ではなく不良在庫なのですから、ある意味当然の対応ではあるのでしょう。

 別に自分たちの本なんですから、どうしようが勝手ですが、「本を踏むと目がつぶれる」 とか親に躾けられ、また本や同人誌、同人の世界が心から好きな筆者としては、他人の本とは云え、一度も開かれず読まれもしない本がゴミ箱に投げ捨てられているのは、本が可哀想に感じられあまり見たくない光景ではあったりします。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2003年2月12日)
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