同人用語の基礎知識

芸能同人/ ナマモノ同人

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数ある同人の中でも、もっとも取り扱い注意な…

 「芸能同人」 とは、文字通り芸能人、アイドルやタレント、お笑い芸人や歌手、役者さん、声優さん、スポーツ選手、アナウンサーなどを創作の対象とする同人ジャンルです。

 アニメやマンガの 「キャラクター」 ではなく、実在の人物を扱うことから、生きている物ということで 「ナマモノ同人」「なまもの同人誌」(80年代にマッチのモノマネをしていたお笑い芸人 片岡鶴太郎のギャグに ナマモノ ってのがありましたが、関係がありそうですが詳細は不明 (^-^;) とも、あるいは主に 2000年代から広まった言葉で 「RPS」(Real Person Slash) とも呼ばれます。

ファンレターの延長としてのファンジン

 同人を 「ファンジン」 と呼ぶこともありますが、その名の通り、特定の作品なり対象なりのファン、熱心な好意を寄せる鑑賞者の、原作者や本人への 「応援したい」「わたしが応援しているのを知って欲しい」「もっと周りの人にも素晴らしさを知ってもらいたい」 ってのが、とりわけ初期の同人における大きな原動力でした。

 従ってこうしたジャンルは 「ファンレター」 の延長のような感じで、同人サークル、同人誌ともに、大学マンガ研究会と女子中高生の少女漫画ファンがその多くを占める最初期の 「コミケ」 などでも、あるいはそうしたイベントとまったく関係のない学校の仲良しグループ同士の集まりの中でも、それなりに 「会報」 のような形として見かけるものではありました。

 筆者が子供の頃、クラスメイトの女の子が、ノートに 「明星」(集英社/ 現 Myojo)だの 「平凡」 だの 「近代映画」(近代映画社/ 現 Kindai) だののアイドルグラビアをスクラップして貼ったものを持ち寄って、めいめいに感想を書き込んで回覧したり、あるいは下敷きに入れて見せびらかしたりをしていましたが (「肉筆回覧誌」 などと呼びます)、これの延長のような感じなんでしょうね。

 なお実在の人物でも、歴史上の人物 (戦国武将とか、新撰組とか幕末の志士とか) も、広義でナマモノ同人とする場合もあります。 小規模な 「同人イベント」 などでは、カテゴリを細分化してないケースもあり、ナマモノと芸能の区別はない場合も多いので、広義で芸能同人に入っているケースもあります。

FC(ファンサークル)から二次創作を伴い芸能同人へ…

 当初の 「同人誌」 は、ファンレターのように応援のメッセージを書きとめたものや、その芸能人なりの活動の記録、コンサートやイベントの鑑賞レポ、「おっかけ」 のレポートのようなものが中心でした。 当時は印刷物と云えばガリ版 (謄写版) の時代で、写真などをコピーすることは難しかったので、スクラップブックを兼ねた肉筆回覧誌を除くと、多くはちょっとした挿絵や芸能人の似顔絵を表紙や誌面にあしらったモノクロ一色のものが多かったようです (ガリ版で刷った後、色鉛筆で1部づつ着色したなんてのもありました)。

 ファンレターなどでもファンからの 「似顔絵」 は非常に多いですし、小学生高学年から中学生くらいの女子がこれらのサークルの中心を担っていたので、これは当然と云えます。

 ところがこれらの絵を描けるファンが、最初はちょっとしたイラスト、次に1コマや4コマのちょっとしたマンガ、さらには同人で誰もが思い浮かべるような本格的な二次創作のマンガやSS (Short Story/ ショートストーリー、二次創作小説、あるいは 「夢小説」(ドリーム小説)、「妄想」) が出てくるに及んで、「二次創作をするファン」 と 「応援したり応援日記を記録するだけのファン」 とで、かなり意識の差がでてくるようになってきました。

「J禁」「P禁」、様々な 「お約束」「紳士協定」(淑女協定)が

 さらに 「やおい」(同性愛/ 「BL」) 表現を含む 「18禁」 (アダルト、エロ) 表現が出るに及んで (「ナマモノ同人誌」 などとも呼ばれます)、ほとんど埋めがたい大きな溝ができたと云って良いでしょう (たいていは、非二次創作側からの一方的な溝なんですが…)。

 同人の世界で二次創作が多くのウェイトを占めるようになってからは、二次創作を含めないファンレターの延長のような同人誌と、二次創作を含むそれとでは、重なっている部分も少なくないのですが、それぞれの両極端では互いに鋭く反目するような形になっていますね。 で、多くの場合、二次創作を含む同人誌側が配慮して、閉じた世界に引っ込んで自主規制しているケースが多いです (年齢層的にも、二次創作を含む方が 「オトナ」 だということもあります)。

 なおその際、同人誌 (後にウェブサイトなどにも) に 「P禁」 (一般禁/ こうしたジャンルに興味のない一般人は見ないでください、見せないでください)、「J禁」 (事務所禁/ 芸能人本人や所属事務所、関係者には見せないでください) と云った 「ゾーニング」 (閲覧購入制限) を同人誌作者やファンらがかなり厳格にかけています。 閉じた世界で同じ趣味の人同士で誰に迷惑をかけるでもなく楽しんでいるのを、外から批判したり無理やり外に出して叩くのは良くないことです。 自分が嫌いなら見なければ良いわけですから。

なぜ 「やおい」(ヤオイ/ 同性愛)なのか

 芸能同人の中でも大きなウェイトを占めるジャニーズ所属タレントやお笑い芸人、ロック歌手などのバンドの多くが、男同士でグループやコンビを組んでいるので、自然とそうした話にしやすいというのがあります。 と同時に、「大好きなタレントを、異性 (女) に汚されたくない」 というファン心理もあります。

 こうしたファン心理は、対象が なまもの だろうが二次元のアニメやマンガ、ゲームキャラだろうが、あるいは女性ファンだろうが男性ファンだろうが、共通して持っている心理ですが、それを分かった上で 「男同士の友情を安易な愛欲に転換するのはどうか」 という別のファンからの批判もあります。

 また実際の同性愛 (ホモ、ゲイ) の立場からは、極端に理想化され現実を無視した同性愛モドキの描写に嫌悪感を持つものがいるなど、個人の趣味、もっと云うと性癖にかかわる問題だけに、妥協も相互理解もなく不毛な争いになっている場合が少なくないですね (芸能同人ファン同士でも、例えば 「やおい と ヤオイ は違う」 など、それぞれで温度差や意識差がかなりあります)。

 さらに男性キャラの片方を 「性転換」 (異性化、女体化、少女化) して作者が自分をそこに重ねたり、そのタレントの出演したドラマや映画、舞台を対象とした二次創作 (ナマモノ + 創作作品で、「半ナマ」 などとも) で、その時の役柄、脚本上の性格設定だけをことさらに取り上げた二次創作で昔からのファンの逆鱗に触れたり、たまたまその作品で競演しただけで、「カップリング」 でメインタレントの 「添え物」 のように扱われることに腹を立てる別のタレントのファンなど、とにかく外部から叩かれやすい、もめやすいジャンルでもあると思います。

増える J禁 P禁 表記…それぞれの趣味を持つファンが共存するために

 大前提の話として、ナマモノ同人系のサークルの作者や同人サイトの管理人は、自分の作品を一般にも広く見せてゆこう、などとは考えていない人がほとんどです。 それなりに節度を持って、閉じた世界の中でやっている人がほとんどなので、必要以上に表に出して、無用なトラブルを起こすような行いは慎んだほうが良いでしょう。 トラブルになっても、タレントさん、事務所の関係者、同人好きなファン、同人の嫌いなファン、誰も得はしないのですから。

 なおそうした同人ジャンルの活動をされている 「同人サークル」 (「ナマモノサークル」 などとも呼ばれます) の 「ウェブサイト」 の多くが、「検索避け」 や、コンテンツの閲覧に 「パスワード請求制」 のような制限をかけています。 入室のためのパスワードをサイトにかけて、そのパスワードをクイズなどに応えてもらって判定、発行するような感じです。

 クイズの多くは同人用語や芸能同人用語、あるいはそのタレントの本当のファンなら当然知っているスラングや、それぞれの英語、ローマ字での表記などです。 こうした世界をまったく知らない人にとってはたいそう難しい問題のようですが、こちらの世界にいる人間にとっては、どれも簡単なものが多いです。

 逆にいうと、それが分からないのなら、貴方はまだ、そのサイトに行くべきではないと筆者は考えます。 質問のメールもかなりたくさん来ますが、一切お答えできません。 こうしたジャンルの置かれている微妙で難しい立場を考え、遠回りでもきちんと段階を踏んで新しい世界に入って欲しいと思います。

転ばぬ先の杖…大事なことです

 芸能同人の創作活動や、それらの作品を掲示するサイトを運営する方は、いきなりサイトを立ち上げずに、ちょっとネット界隈の 「空気」 を読んで見るのも良いかも知れません。 同じカテゴリで活動しているサークルさんのサイト運営や、情報交換のための掲示板の書き込みなどを読んでみましょう。 同人活動なんかは誰の許可を得る必要もなく、やりたくなったら誰でもやってOKですが、注意深くネット界隈を見渡せば、「これはやったらまずいかも…」 なんてのが、なんとなく分かるようになってくるものです。

 筆者もここで偉そうに他人にアドバイスできるような身分では全くありませんし、前述した通り、これは趣味なんですから、他人に迷惑を掛けなければ、何をやっても自由です。 しかし、大好きなタレントを応援するつもりで一生懸命にサイトを作ったら、同じタレントのファンから思わぬ攻撃を浴びてショックを受けて閉鎖…なんてのを何度か見て残念に思っているので、転ばぬ先の杖をどうか準備してくださいねと思います。

 悪意で人のサイトを潰そうとしているのなら、悪いのはその人なので問題解決もそれなりにシンプルです。 しかし実際は、善意からのアドバイスも多いのです。 それはしばしば耳に痛い意見だったり、お節介だったり、あるいは過剰反応だったりもするのですが、相手の真意を好意的に解釈するくらいの 「余裕」 は、持っていた方が良いと思います。 でないと、後々辛いと思います。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2005年11月3日)
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