同人用語の基礎知識

メイド服/ Maid Costumes

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制服・コス系のメジャーに躍り出た 「メイド服」

 「メイド服」 とは、黒や濃紺のワンピースに、白くフリルがついたエプロンやエプロンドレスを組み合わせた、クラシカルな印象を持つ伝統的デザインを取り入れた女性服の事です。 メイドドレスとも呼びます。 通常はこれらに加えて白い 靴下 (日本の場合、紺色ハイソックス や、膝上丈の靴下である オーバーニーソックス が多い) と、フリルのついた カチューシャ (ホワイトブリム) なども組み合わせられます。

 デザイン傾向により 「ヴィクトリアンメイド」「フレンチメイド」 及び 「ジャパニーズメイド」 に大別でき、それぞれに黒や濃紺、青からピンク、オレンジなど様々な生地色があります。 また主にスカート丈の長短により、ロングメイド、ミニメイド (ショートメイド) などにも分けられます。

女の子の魅力を引き出すメイド服
女の子の魅力を引き出すメイド服
(フレンチメイドスタイルのジャパニーズメイド)

 この服の本来の役割は、メイド (Maid/ 家事労働を行う女性使用人、家政婦やハウスキーパー) の仕事着、制服 (女中服) ですが、その独特な雰囲気、女性らしさが際立つ端正なシルエットなどから、おたく たちの間で人気が爆発。

 1990年代にブームとなってからは、同人 における、とても大きな 作品ジャンル の一つになると同時に、アニメマンガゲーム などでもこうした服装をした キャラ、もしくはメイドが登場する設定の作品も増え、2000年代以降は代表的な 萌え要素 のひとつともなっています。

アンナミラーズの制服が可愛いと評判に

 メイド服が流行り始めた発端ですが、フレンチスタイルのメイド服風の制服を採用していた 「アンナミラーズ」(アンミラ/Anna Miller's/ ドイツ家庭風料理やアメリカンデザートパイ、ケーキなどを提供する女性向け甘味系レストラン) の、職業系の 制服モノ としての人気と、ウェイトレスさんの人気の高まりがあります。

 アメリカで創業されたアンナミラーズは、日本のお菓子メーカー、井村屋の手により日本にも出店されることになり、1973年6月に第一号店となる青山店がオープンしました。 その後徐々に店舗を増やし、1980年代から1990年代にかけ、首都圏を中心に新規店舗を次々にオープン。

 その独特な店の雰囲気と独創性のあるメニューが一部のコアな ファン に絶大な人気を博し、大きな話題となっていました (その後不景気や外食産業の市場縮小などもあり、急速に店舗数が縮小)。

 その後、メイドを主人公に据えたメイドゲームの始祖ともされる 「殻の中の小鳥」(BLACK PACKAGE/ 1996年2月29日) が発売。

 さらにこのアンナミラーズの制服デザインの影響を強く受けたコスチュームが登場する 「ピアキャロ」(Piaキャロットへようこそ!!/ F&C/ 1996年7月26日発売) などにより、いわゆるコスチューム系美少女ゲームブームが発生し、これが同人の世界でとても大きな発火点に。

 同じ頃、「美少女戦士セーラームーン」(セラムン) や 「新世紀エヴァンゲリオン」(エヴァ) の大ヒットにより、同人イベント の世界に男性ファンが加速度的に増えていたこと、中でもセラムン人気がむしろ女性ファンの間で盛り上がり、それにつれて コスプレ の世界が盛り上がっていたことなど、いくつもの相乗効果をもたらす状況が出揃っていたのも、結果的に可愛らしいメイド服が注目を集める大きな契機となっていました。

 メイド服っぽい特徴を持つ制服は、神戸のドイツ菓子店 「ケーニヒスクローネ」 の制服なども人気がありましたが、こうした制服を使うレストラン・洋菓子店・喫茶店の店員さんのファン活動、あるいはそれらをモチーフとした創作活動は、メイドブーム以前から一定の割合で行われていて、マニアックな人気を得ていました。 古風な黒や濃紺と白のコントラストが美しいエプロンドレス (黒メイド服) は、とくに 「アリス服」(「不思議の国のアリス」(Alice's Adventures in Wonderland/ 1865) などのアリスに由来) などと呼ばれ、1980年代から ロリ の象徴的なアイテムとしても取り扱われていましたし (アリコン など)。

 それらが1990年代になって前述した ゲーム の人気などから 「メイド服」 として再構成されて一気に大ブレイク。 さらにコスプレ、後にはイベントコンパニオンなどを巻き込んで、大きく息の長いブーム、さらには文化へと繋がっていったのでした。

筆者も吉祥寺や立川のアンミラにはお世話に…

 アンナミラーズの制服は、胸がとても強調されるデザイン (俗にいう後の 乳袋状態) で、白ブラウスにオレンジ、後にピンクや赤のワンピースの組み合わせで、女の子がとても可愛らしく魅力的に見える制服となっていました (アルバイト採用で、厳しい容姿チェックがあるなどの都市伝説が流布するくらい、可愛らしい女の子も多かった)。 こうしたデザイン、色は、黒っぽい服+白エプロン+フォーマルな造形 のメイド服とは似て非なるものなのですが (歴史的なつながりはあります、後述します)、男性から見て両者に共通していた魅力に、いかにも 「女の子女の子」 とした、「ちょっと古風な可愛らしさ」 があったのでしょう。

 時代的にはバブル絶頂からバブル崩壊にかけての頃にメイドブームが盛り上がったと記憶していますが (当時、メイドファンの間では割と知られていたメイドサイトや サークル を知人がやっていて、その手の店や イベント に引っ張りまわされていました…)、世の中でボディコンや極端な ミニスカート などが流行る中、1980年代のアイドルブームを経験した男性にとっては、フリフリで可愛らしいこれらの服のデザインが 属性 としてとてもマッチしていたのだと思います。

 ただし1980年代から音楽好きな女性から発生して同じく1990年代に大きく広がった ゴスロリ (ゴシック&ロリータ) は、そうした傾向が似ている部分も多いのですが、男性から受け入れられるようになったのは、実は結構後です (苦手な人は未だに多い)。 これは、オタクな男性がしばしば持っている、「私服がおしゃれすぎる女の子は苦手だ、嫌だ」 という傾向が大きいのでしょう。

 ゴスロリが世間一般からみておしゃれとされるかどうかはともかく、やたらと気合が入った、「女性が女性に見せるために着ている服」 に嫌悪とまでは云わないものの、「近寄り難い距離感」 を覚える男性は多いものです。 メイド服は私服ではなく、あくまで制服だという点が、それをうまく回避してくれているのかも知れません。 アンミラやピアキャロなど、特定の大きな発端はあったのでしょうが、何よりオタクにとっての時代的な要請もあったのでしょう。

2000年代になり、メイド服専門店なども次々に登場

胸がとても強調されるメイド服
胸がとても強調されるメイド服
(朝比奈みくる)

 2000年に入るとこうしたブームを受けて、「キャンディフルーツ」(キャンフル/ CANDY FRUIT) や 「エミリー」(Emily)、「ミルキーアンジェ」(milky ange)、「メイドミミ」(Maid MiMi)、「レティキュール」(Reticule) といった、ネット でメイド服の 通信販売 を行う専門の業者などが次々に登場。

 こうしたメイド服の通販は、1990年代から広い意味でのコスプレ衣装の カテゴリ の商品として、一部の衣装の自作を行っていたサークルや コスプレ専門のアパレル企業などが業務の一環として取り扱っていたり、それ以前は長らくパーティーグッズやパーティーコスチューム、ランジェリー、大人のおもちゃ の一種の様な扱いで、アダルトショップなども販売していました (ネット上でのやり取りとしては、パソコン通信 の時代からあります)。

 これが 「女性が自分のために服を買うアパレルブランド」 として強く認識されるようになり、その販売形態が中心となったのは、こうしたメイド服ショップの登場からとなります。

 価格によっては粗悪な 「一夜限りのお遊びコスチューム」 などもありますが、アパレル全体が低価格化するなか、そこそこの費用でしっかりした製品なども次々に登場。外出を前提とした靴やアクセサリーなども合わせて登場し、いわば、「男性に見せるための服」 から、「同性である女性に見せる服」、すなわち 「ごく普通の女性のファッションの一部」 になったとも云えるでしょう。

 これらの専門店では、高品質をモットーに掲げたり、その品質をいかして実在店舗とのコラボレーションを行ったり、メイド関連の団体や関連業務への進出なども行い、メイドとメイド服の市場を拡大しています。 一方で、クリアストーンから六本木メイドと称した比較的安価なパーティーグッズとしてのメイド服なども、人気タレント (小倉優子など) をキャラクターに立てた形で登場。 萌えブームの中、認知度をますます高めました。

 なお同じ2000年2月25日には、常設の メイド喫茶 の第一号となる 「ゲーマーズカフェ」 が 秋葉原 にオープンしています。 こちらは初期からずっと男性向けのお店ではありますが、一部のお店のメイド (ウェイトレス) は地下アイドルや一部に熱狂的なファンを持つマイナータレントのような扱いを受け、あるいはオタク的な文化に興味のある女性から、憧れの対象と見られるようにもなっています。

 これは、本来は男性向けのお店で女性が男性に向けて行うファッションや化粧、ドレスアップであったキャバクラ嬢のそれが、むしろ女性から 「イケてる」 と支持されブームになった、雑誌 「小悪魔 ageha」 の現象などに近いケースでしょう。 さらに2007年から2008年頃からは、男の娘、女装少年 も勢力として大きく台頭。 新たな展開を迎えています。

メイド服の原型誕生は、19世紀ヴィクトリア朝時代の英国

メイド服イラスト2

 いかにもクラシカルな印象のあるメイド服ですが、歴史はあまり古くありません。

 こうしたタイプの服装は、19世紀ヴィクトリア朝時代 (1837年〜1901年) のイギリスの、身分階級や役職としての 「メイド」 の給仕服をルーツとします。 これは 「ヴィクトリアンメイドスタイル」(Victoria Maid Style) と呼びます。 午前中に着用するものと午後に着用するものの2タイプがあり、現在日本でメイド服としてイメージされるものは、午後用のものが原型となります。

 当初はこれといった決まった服装や名称があった訳ではなく、炊事・洗濯・掃除などの家事労働を行う際に実用品として身につけていたエプロンや髪留め、帽子などが、それぞれの家で用意され、特に決まりのない服の上にそのまま着用していました。

 雇い主は伝統的上流階級や、産業革命によって急速に台頭した富裕層が多く、大英帝国絶頂期の時代でした。 職場はお屋敷ですが、来客も多く、またご主人様となる旦那様やそのご婦人の身の回りの世話をする中で外出などもあり、徐々に 「その仕事に相応しい身なり、ファッション」 が対外的に求められるようになり、こうしたスタイルが作業着として登場。

 黒や紺色は汚れが目立ちにくいですし、また派手な装いの婦人の引き立て役として地味な色合いだったのが良いのでしょう。 一説には、婦人やその家族 (その家の娘) と、外出先で明確に区別をするための工夫だったとも云われています。

イギリスからフランス、そしてアメリカへ

 こうした服装と文化は、その後イギリス以外の国へも伝播。 フランスでより洗練、あるいは性的な魅力が強調されることになりました。 こうしたものは 「フレンチメイドスタイル」 と呼びますが、女性の魅力を引き出す華美な装飾や露出度の高いスカート丈、袖などとなり、本家のイギリスから見た時には 「下品だ」 ともされるようです (イギリスから見て French Maid Style という呼び方に、そもそも揶揄や蔑称のニュアンスがあります)。

 これらフレンチスタイルには、生地が布ではなく革製でボンテージの要素を強く持っていたり、極端なミニスカートに網タイツ、ノースリーブ (袖なし)、大きく露出する背中など、もはや本来のメイドとはかけ離れた極端なものもありました。 黒い露出度の高い服を着た 「ご主人様の命令を受け入れる女性」 として、ある種の SM の要素を持ったり、さらに世俗的で性的な装いを持ってアメリカ (アメリカンメイド) などで バニーガール のようなイメージを創り上げる原型のひとつともなっています。

 いわば時代を経るごとに、男性から見てある種のセックスシンボルのような扱いになっている場合もあるのですね。

秋葉原とオタクのブーム、そしてメイド喫茶の登場

 同人におけるメイド服の関わり方は人によって色々です。

 2次元3次元 を問わず好きな人もいますし、フェチ的 な衣服趣味として愛好する人、衣服の特徴のいくつかの共通点からゴスロリとの類似性があり (厳密にはお嬢様服が時代を下って世俗服となったものと、その使用人のコスチュームですから、コンセプトからして全く違うのですが、ロリータメイドなど、融合したものも見かけます)、こうした時代ファッションの初心者のとっかかりとなっているケースもあります。 また 版権もの ではない、個性的なオリジナルファッションの着こなしとして愛用している人もいます。

 2000年代に入り、いわゆる秋葉原を中心とするある種のオタクブーム、メイド喫茶の登場とその話題の広がり (2004年の 「電車男」 の大ヒットなどもあり、同人やおたく以外の一般での話題が大きく高まりました) から、確固としたメジャージャンルとしての揺るぎない存在感を獲得したといって良いでしょう。

秋葉原はいつもメイド服がいっぱい
秋葉原はいつも
メイド服がいっぱい

ジャパニーズメイドという呼び名も

 2000年代中頃からは、「Kawaii」(カワイイ) との日本語そのままの英語と共に、逆にフランスやイギリス、アメリカなどに、日本でアレンジされたメイド服が逆輸入されている状況もあります。 その場合は特に、「ジャパニーズメイドスタイル」(Japanese Maid Style)、あるいは単に 「ジャパニーズメイド」 などと呼ばれる場合もあります。

 歴史的にごく大雑把に見ると、ヴィクトリア朝時代にイギリスで原型が生まれたメイド服が、フランス、ついでドイツに渡り、その後アメリカで花開いて、ドイツ系アメリカ人、スタンレー・ミラー (Stanley・Miller) によってアメリカで創業されたアンナミラーズの制服として日本で人気がブレイクし、さらにオタク文化や女の子のカワイイという価値観と融合しながら再びフランスやイギリスに回帰していることになりますね。

 時代も国境も超えて、世界中で愛され広まったメイド服。 そう考えるとメイド服も、見た目や服飾史の対象としてだけでなく、文化としてもとてもロマンチックに感じられます。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2000年5月1日)
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