同人用語の基礎知識

Vtuber/ バーチャル ユーチューバー

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2018年暮れから空前の大ブームとなった 「Vtuber」

代表的な Vtuber 「キズナアイ」
代表的な Vtuber 「キズナアイ」

 「Virtual YouTuber」(バーチャル ユーチューバー)、あるいは略語の 「Vtuber」(ブイチューバー) とは、2D3DCG で描かれた キャラクターアバター) と、そのキャラを視覚的な アイコン として画面や活動の前面に押し出した動画の作成・投稿・生配信などを行う配信者 (演者・生主・ライバーなど) を指す言葉です。 単に 「V」 と呼ぶこともあり、女性なら女V、男性なら男V、個人でやっているなら個人V、事務所所属なら事務所Vや事務所系V、箱系Vなどと呼びます。

 言葉としては、動画サイト Youtube において、主に本人が登場する自作の動画を アップロード する人 (投稿主) たちを 「YouTuber」(ユーチューバー) と呼ぶようになったことから、この本人部分を前述した CG によるキャラに置き換えたものを バーチャル (仮想) な YouTuber と称するようになったものです。

 元々日本では、美女や美少女、アイドルや ネットアイドル (ネトア) などを イラスト や CG のキャラに置き換えたものを バーチャルアイドル、バーチャルネットアイドルなどと呼ぶ習慣がありました。 YouTuber の存在感が増すにつれ、バーチャルな存在がこう呼ばれるのは当然だったとも云えます。

 ただし日本では、ニコニコ動画 (ニコ動) などの影響から、投稿者や配信者、実況者、生主といったニコ動的な言葉や概念が極めて強かったことから YouTuber という言葉が広く使われるようになったのが海外に比べても比較的遅く、また使われ始めた初期の頃は YouTuber といった名称がしばしば揶揄の対象となりがちなネーミングだったことも災いし、言葉としても概念としてもあまり注目されていませんでした。

「YouTuber」 と 「バーチャルYouTuber」 とその前夜

 比較的早くに話題となった日本の動画配信者に、Ami Yamato (アミ ヤマト) さんがいます。 2011年春に日本からロンドンに移住した方で、3D キャラの姿で基本は英語による Vlog (Video blog) を同年6月14日から投稿し続けています。 本人は Vtuber を名乗っていたわけではありませんが、投稿スタイルが一般の YouTuber の本人部分をバーチャルな姿にしたものとなっているため、動画再生数が増えるにつれ 2013年頃から英語圏のネットニュース記事や ネット民 などから、しばしば Virtual YouTuber と呼ばれることもありました。

 一方、「好きなことで、生きていく」 という、HIKAKIN さんら 人気 YouTuber を多数起用したテレビ CM が2014年10月から流れると、日本でも YouTuber という言葉が一般に広く浸透。 ニコ動の影響力が相対的に低下する中、ユーチューバーという言葉も揶揄や侮蔑の対象から 「人気が出れば大きな影響力や大金も得られる憧れの存在」 をあらわす ポジティブ な言葉としても広まることに。 ニコ動からのプラットフォーム変化などもあり、投稿者や配信者、生主といった人たちの言葉との併用や言い換えも徐々に進むことになります。

 この頃、それ以前から活動していた動画制作・配信者の間でも、こうした言葉の置き換えが一部で発生していました。 例えば ゆっくりしていってね!!! で人気を得ていた 「上海アリス幻樂団」 による 弾幕系シューティングゲーム 「東方Project」 のキャラ、博麗霊夢と霧雨魔理沙のイラストに、テキスト読み上げソフト (ゆっくりボイス) などを使った動画 (いわゆる 「ゆっくり動画」「饅頭頭動画」) の作成者の中には、シャレとしてバーチャルユーチューバーを意識していたケースがあります。

 また DTM (デスクトップミュージック) 用の音源ソフトウェアシリーズ 初音ミク (バーチャルシンガー) の 3D モデル (MMD/ 2008年2月24日公開) を使ってボーカロイドに無理やりしゃべらせたネタ動画、MMD ライブチャットを利用した配信、さらには音声合成エンジン 「AITalk」 を元にした 「VOICEROID」 の 「月読アイ」(2009年12月4日) を皮切りに、東北ずん子や琴葉茜・葵といったキャラを使った ゲーム実況 や解説系動画なども、「ある意味バーチャルなユーチューバー」 だと ネタ として自称したり、コメント欄 などで冷やかす使い方が生じていました。

 時期は前後しますが、個人系でニコ動で活動していて後に Vtuber 宣言を行った 「のらきゃっと」 さん、バーチャル生主として活動している 「雪猫カゥル」 さん、MMD を使った配信を行っていた 「みゅみゅ」 さん、Vtuber ではなく二次元ユーチューバーを名乗った 「エイレーン」 さん、「カフェ野ゾンビ子」 さんなどなど、Vtuber ブームの以前から、既に類似の活動を行い万単位の ファン を集めた大きな存在だけでも、この他も含め相当な数がいます。

 というか、キャラに なりきって 喋るというと、デスクトップ常駐型のアプリとして2003年頃に人気を博した 「任意ラヂヲ」(Triumphal Records) がありましたし、プラットフォームとしての 「伺か」 もありますし (キャラはゴーストと呼ばれていました)、このあたりは手法や環境は違うもののコンセプトには極めて強い類似性があり、どこまでさかのぼればいいのかという感じはします。 ちなみに 「伺か」 は現在でもゴーストの追加など活発な活動を続けており、界隈からは 絶対領域 をはじめ、様々なオタク的ミームも生まれています。

 そういえばマックス・ヘッドルーム事件とかもありましたし、電子的な意匠に何かを仮託するというのは昔から当たり前のようにあったと云えますねw

MMD による動画配信と 「WEATHEROID TypeA Airi」 の登場

「WEATHEROID TypeA Airi」 公式サイト
「WEATHEROID TypeA Airi」 公式サイト

 なお後の Vtuber とほぼ同じ造形、活動内容で当時話題となった特筆すべき存在に、株式会社ウェザーニューズにより2011年末に企画発表、2012年からニコ動を中心に本格活動を開始した 「WEATHEROID TypeA Airi」(ウェザーロイド タイプエー アイリ/ ポン子) というサポーター参加型企画があります。

 2015年3月10日には公式サイトが開設され、規約の範囲内で自由に使える MMD モデルや 2Dイラストデータも配信。 また 二次創作 に関する規約も整備され、ファンらの投稿作品を紹介するなどにより盛り上がりを見せます。

 ただし 公式設定 はあくまで 「ウェザーロイド」 だったことから、その後の Vtuber に影響を与えたのは間違いないのですが、あまり詳しくない人からはボーカロイドやボイスロイドといったくくりで見られることも多かったようです (その後、 Vtuber がブームとなることで 人気 Vtuber とのコラボ企画なども行われ、そこで初めて存在を知った Vtuber のファンも多かったようです)。

様々な制約から、個人で配信するには難しい課題が

 ところでそれ以前の個人系配信者の時代を含めても、MMD データを自在に動かすにはそれなりの技術や根気が必要であり、またモーションキャプチャーによってリアルタイムで動きをつけるなどの環境整備にもそれなりの機材が要求され (例えば Kinect (キネクト) とか)、まだまだ様々な課題がこの頃には存在しました。

 また技術的な部分をクリアできても、MMD を巡る独特な文化や壁 (MMD の各種モデルや 素材 の利用規約とか収益化・商用利用の是非とかあれこれのローカルな決まり事) も、界隈にずっといる人には自明のものでも、部外者からは複雑でわかりにくい部分やトラブルを招きかねない要素が結構ありました。 とりわけ2014年からサービスが始まった VRChat 関連では、一部とはいえ MMD モデルやパーツの規約外利用や販売、3D ゲームキャラクターのデータ転用、クレジット表記の不備問題など権利関係のトラブルが次々に噴出し、部外者がうかつに手を出して人気が出て注目されると火だるまになりかねない状況もありました。

 権利関係がクリアな完全自作した MMD モデルをモーションキャプチャで自分の体に合わせて動かすことができても、3D モデルを コスプレ の衣装として着用するとの意味で 「バーチャルコスプレ」 や 「VRコスプレ」 と呼んだり、この状態で配信することを、「バーチャルコスプレ配信」 とか、バーチャルな コスプレイヤー (バーチャルコスプレイヤーやレイヤー) と呼ぶなどに留まり、まだまだ 「バーチャルなユーチューバー」 といった認識と広がりは一部を除きあまりなかったようです。 これは前述した様々な課題によってハードルが高く、実験的な作品が多くてその後の YouTuber のような気軽さがなかったこと、YouTuber の言葉のイメージがまだあまり良くなかったことが主な原因でもあったのでしょう。

 しかし2015年頃からは、バーチャルアバターツール 「FaceRig」(フェイスリグ) と 2D の画像をモーフィングによって動かせる 「Live2D」 、定番のライブストリーミングツール 「OBS」(Open Broadcaster Software)、および安価な webカメラやマイクを組み合わせるだけで比較的簡単に 「自分の姿をリアルタイムでキャラに変更して配信や録画すること」 ができる環境が前述した 「ゆっくり」「MMD」 と同時並行しながら新しく整います。

 これを 「新しい表現方法だ」 とその可能性を強く意識する人もいたものの、基本的には昔からある技術の延長で似たようなものが既にあり、ブームとなるほどの大きな動きはまだありませんでしたが、誰かエポックな存在が登場することで、大きな流れが生じる土台は出来上がりつつあったと云えます。

その後の Vtuber を決定づけた 「キズナアイ」 の登場

Kizuna AI Official Website
Kizuna AI Official Website

 2016年12月には、その後の Vtuber の方向性やイメージを決定的にした巨大な存在 「キズナアイ」 さんが、「Vtuber」 を自称して活動を開始します (A.I.Channel)。

 白とピンクを基調とした アニメ っぽい姿で、「かわいい人工知能 (AI)」 をイメージさせる近未来的な女の子キャラですが、3D モデルは最初から 商業 レベル の高品質であり、演者 (中の人・魂・前世) の声もかわいくしゃべりも面白く、公式サイトは一昔前のネトアのホームページっぽい作りで再現と非常に凝ったものでした。

 2017年以降現在に至る Vtuber は、旧来のネットアイドルやバーチャルネットアイドル、生配信やゲーム実況などの文脈も踏まえつつ、このキズナアイによって開拓された新しい ジャンル だといっても良いでしょう。

 ただし登場当時は一部の感度が高い人には 「こりゃすごい」 と注目されたものの、それからしばらくはあまり話題にもならなかったようです。 コアなおたく層にとっては前述した様々な 「似たような活動」 が念頭にあったのも影響していたのかも知れません。 しかしほどなくして日本ではなく世界最大の画像掲示板 4chan (よつば) を中心に海外で爆発的に人気が盛り上がり、よつばに出入りしている日本人が注目し始めて逆輸入されたような形となっていました (筆者 もロシア人の作った画像か何かで見たのが最初でした)。

人気 Vtuber が次々に登場し、大ブームに

 翌2017年になると若い世代の おたく を中心に日本でも 「キズナアイ」 の 認知 と人気が急速に拡大、またそれに合わせるように次々と個人系・企業系の Vtuber が登場します。 「電脳少女シロ」 さん (2017年6月23日)、「ミライアカリ」 さん (2017年10月27日)、「バーチャルのじゃロリ狐娘Youtuberおじさん」 さん (2017年11月8日)、 「輝夜月」 さん (カグヤルナ/ 2017年12月4日) らはとくに高い人気を誇り、「バーチャルYoutuber四天王」 などと呼ばれ (キズナアイを含め、「五人揃って四天王」 とも、この辺りは解釈が様々あります)、2017年末から翌2018年にかけ、「Vtuber」 の大ブームを巻き起こします。

 これは生身の YouTuber が盛り上がる中で、その急拡大の波に乗ったこともさることながら、それぞれは独立した5人の個性豊かな Vtuber がその個性や 属性 の豊富なバリエーション・多様性からあらゆる 「こういうのが好きな層」 を取り込めたこと、ファンらにそれぞれの 推し はありつつも、Vtuber 同士のコラボなどを通じて 「界隈を盛り上げよう」 という独特でとても強い一体感があったことが大きいのでしょう。

 さらにゲーム実況や 歌ってみた や踊ってみたといった Vtuber と相性が良い ネット 発の文化がすでに若者の間で市民権を得て、「当たり前のものになっていたこと」 などが相乗した結果でもあります。 元から Vtuber に企業系が多かったこともあり、ビジネス的な展開も迅速かつ大規模で、あらゆるステージで一気に盛り上がったのも大きかったのかもしれません。

 また V というよりはバーチャルアイドル寄りの文脈ではあるものの、2017年8月の コミケ (C92) 企業ブースにプロジェクト名未定の形で後の 「えのぐ」(当初は2人組で活動名 「あんたま」) も登場。 コミケ開催中に Twitterフォロワー を10,000人獲得でデビューというプロモーションを行ったものの未達に終わり 爆死。 ネットでは揶揄の対象ともなりましたが、その後も地道な活動を続け、バーチャルアイドル事務所 「岩本町芸能社」 所属のアイドルとして目標をついに達成。 同年 CD デビューしてコアなファンを獲得しつつ、バーチャル握手会 (ファンは 会場 で VR ゴーグルを装着し、ロボットの手と握手する) をはじめ オンラインオフライン 問わず、日本初・世界初といった新しい取り組みを伴う VRライブ イベント を多数行いファン層を拡大しています。

誰でも参加できる気軽さ

 このブームが爆発的だったのは、ニコニコ動画における生配信や歌ってみた、初音ミク動画などと同様、見るだけでなく個人ユーザーも次々に制作者・配信者として参加できたという点も大きな特徴でしょう。

 当初は 「ゆっくり動画」 を作成するためのツールなどが流用された静止画やそれに近いものにゆっくり音声を組み合わせたもの、ゲーム のキャラの声を差し替えただけのようなものもあったものの、前述した 「FaceRig」「Live2D」「OBS」 といった Vtuber としてデビューするための具体的な方法論やツール (さらにはボイチェン (ボイスチェンジャー) といった、いわゆるバ美肉 (バーチャル美少女受肉) のツール) が導入・連携するノウハウとともにブーム前後に既に明確に確立されズラリと揃っていたのも大きいと思います。 知識やお金があまりなくても、わずかな根気とやる気さえあれば誰でも参加できる敷居の低さがありました (実際、元生主や動画投稿は初めてという中の人の Vtuber も多い)。

 ちなみに筆者は新しいもの好きなので、さっそく環境を整え下手くそな自作のキャラを作って参入を目指しましたが、男性にとって美少女キャラになりきるための最後にして最大の壁 「声」 の問題があり (いや別に男性キャラでやればいいだけではありますが)、ボイチェンや両声類トレーニングも試みたものの上手くいかず断念しました…。 そのちょっと前に のじゃおじさんを見て 「地声でええんや」 という衝撃と勇気を得て一歩踏み出そうとはしたものの、もろもろが重なり最後の一線を踏み越える力はありませんでした…。

 なお2018年2月14日には、かねてから人気のウェブサイトとなっていたバーチャルネットアイドル 「ちゆ12歳」 さんが、サイト上にて「生存報告」と題し、「バーチャルユーチューバーちゆ12歳」と名乗り、動画の配信を始めています。 この辺りの感度と反射神経の良さはさすがと云った感じです。

キャラ (ガワ) や設定と、中の人 (演者) の一体感

 動画の配信者・実況者としての Vtuber には様々なタイプがあります。 単にキャラの絵に声を合わせただけのもの、キャラに様々な設定をつけて演者がそれになりきって演じるもの、台本に基づいてセリフをしゃべるようなものもあります (台本も、本人が書いたり外部に依頼するものもあります)。 事務所系の Vtuber の場合は、キャラ絵 や設定を提示して、中の人をオーディションで選ぶ形でキャラを作る場合もあります。

 いずれの場合もそれぞれに魅力や弱点はありますが、編集 を伴う完成した動画として投稿するケースはともかく、生配信のゲーム実況などでは、ついつい中の人の 「地」 が出る場合もあります。 また長期にわたって活動を続ける中で、設定と地の部分が混ざり合い、一つの独立した新しい人格が宿る場合もあります。

 このあたりは、それが魅力だと感じるファンもいる一方、危うさを感じるファンもいて、実際に地が出すぎて、あるいは大勢の視聴者に囲まれ舞い上がって口が滑るなどして、炎上 やそれに近いトラブルが生じることもあります。 アニメの声優さんなどが失言によって炎上し、演じていたアニメのキャラにも飛び火して アンチ が群がるなどはそれ以前にもありましたが、Vtuber の場合はキャラと中の人がより強固に一体化しがちなので、これは大きな問題です。

 一方で、ネットの世界でのみとはいえ、性別や年齢、体形、障碍の有無など無関係に 「なりたい自分になれる」 という魅力は大変大きく、一体化もなにも、「これがネットにおける自分自身だ」 と強く感じて活動している場合もあります。 とくに個人で自作のキャラを使った Vtuber などは、その傾向が強いでしょう。 人が持つ外的側面、あるいは社会的な仮面を、演劇で用いる仮面に喩えて 「ペルソナ」 と呼びますが、内面とリアル社会におけるペルソナ、ネットや趣味の世界におけるペルソナそれぞれを使い分ける人もいれば、全てが一緒になっている人もいます。

 他の創作物でもアバターでもアイコンでも何でもそうですが、創作物だ架空のキャラだ絵だと思って他人のそれを安易にいじったり嘲笑・侮蔑するのはやめた方が良いでしょう。 それは一部の人にとっては人格否定となんら変わらない行為であり、失礼である以前にモラル的にも許されない行為です。 いわんや 「性的搾取だ」「性犯罪を助長する」 などの誹謗中傷はほとんど論外の名誉棄損です。

キャラと演者とが離れてしまうことも

 キャラのイメージを優先させたい企業に属した演者や、個人でも大勢のファンが着いてキャラのイメージが固まってくると、逆にそれが重荷になったり足枷になる場合もあります。 一部の Vtuber などは、V の活動を引退してユーチューバーや生主に戻ったり転身して 「ありのままの姿」 での活動に軸足を移す人もいます。

 無理なキャラづくりや演じることをやめて顔出ししたとしても、それが必ずしもありのままの姿だとは云えなかったりもしますが、ものを創ったり何かを発信し続けるストレスや悩みは小さくないので、本人も悩んだり苦しんだ結果の決断なのでしょう。 それを見たファンの側も、自分の推しが自分の望む活動をしなくなって離れることになったとしても、その決断を尊重する姿勢を見せるケースが多く見受けられるのは、救いがある状態だと云えるかも知れません。

1人の Vtuber と1人の中の人という関係性ではない場合も

 芸能事務所的な企業系の場合、中の人を決めるオーディションを終えた後に Vtuber としてデビューしたり、既存の個人 Vtuber を招待するケースが多いものの、中の人のオーディションそのものをある種の エンタメ にしたような企画先行のプロジェクトもいくつか登場しています。

 例えばライブ配信プラットフォームの ShowRoom とピクシブ・ツインプラネットが 主催 した 2018年11月の 「最強バーチャルタレントオーディション〜極〜」 では、61人の予選参加者が5人の Vtuber (バーチャルタレント) それぞれの中の人の座を巡り、同サービスや Twitter に同じ名前・キャラ、顔アイコンの アカウント を作成・活動して勝ち抜き戦を行い、それをネットで公開するという企画でした。 その有様は古代中国の呪術 「蠱毒」(最後の1匹になるまで蠱を共食いさせる儀式) になぞらえバーチャル蠱毒とも呼ばれ、オーディション参加者の発した 「消えたくない」 が流行語になるなど、大きな話題となっています。

 また Vtuber の世界を強力に牽引していたキズナアイさんも、2019年5月から1年間ほどにわたって、いわゆる分裂というか増殖 (分人) を開始。 見た目が同じで声や人格が違う4人のキズナアイとなり、その後一部は別キャラとして再出発し騒動は収まったものの、「ガワ」「中の人」「設定」(場合によってはそれまでの活動履歴や軌跡) が1セットで1人の Vtuber の人格が作られるというイメージが支配的な中、ファンに混乱が生じたり、これまでキズナアイを担当してきた中の人 (元の私) の引退があるのではないかとの憶測も流れ、様々な戸惑いの声が上がることとなりました。

 これら有名なものからそうでないものまで、活動の途中で都合により中の人が変わる、逆に中の人が別のキャラになる (転生)、原稿読み上げ系の Vtuber の原稿 作者 や運営者が変わる、読み上げソフトの声が変わるといった例は大小様々あり、キャラのイメージとしては一体化しつつも、現実問題としてコンピュータ上のガワと中の人とが分かれている Vtuber は、これまでのリアルタレントとは異なる新しい可能性を持つと同時に、管理上の様々なリスクや予期せぬファン心理の揺さぶりが生じる可能性がある存在でしょう。 このあたりはファンの側にも様々な考え方があり、合理的な運営方法や Vtuber としての多様性から支持する人もいえばキャラへの思い入れが醒めたり離れるファンなどもいて、温度差も色々です。

 とくにキャラが途中から分裂・増殖するものは、新世紀エヴァンゲリオンの綾波レイとか、とある科学の超電磁砲の御坂美琴と妹達 (シスターズ) などのアニメ的な設定とはまた異なる生々しいものでもある上、そもそも分裂した全てを追う時間もなくなるので、おおむね苦手だとするファンが多いようです (まぁ綾波や御坂も最初から提示された設定ではなかったため、推しの分裂に感じられて苦手な人は結構いますが…このあたりはある程度初めの方から別キャラのような形で提示されそれぞれのキャラの個性も立っていたガンダムシリーズのエルピー・プル&プルツーなどとも印象が違いますね)。

ブームは過熱し、1万人を超える Vtuber が登場

 先行組やブームを牽引した四天王を中心に、一般の人までが参加する中ブームは過熱します。 一説には Youtube での配信者だけで1万人を越える Vtuber が登場したとされ、基本はゲームやアニメといったおたくネタがベースとは云え、徐々に専門性を発揮したありとあらゆる Vtuber が勢ぞろいすることとなりました。 一方で過当競争も始まり、せっかくデビューしたものの再生数が伸びずにすぐさま消えてしまう人、放置されるチャンネルが増えるなど、厳しい状況があっと云う間に発生します。

 また人気のある Vtuber やその可能性がある Vtuber を集めたり発掘したり育てたりといった芸能事務所的なビジネス展開も活発となり、様々な人気 Vtuber が生まれ、短期間に大きな話題を作ったりそのまま消えたりと、戦国時代さながらのサバイバル状態も生じ、ブームにもやや陰りが見えているとの話もあります。

巨額のお金が動くようになり、業界に有象無象が集うことに

 一方、あまりにも短期間に急膨張し、かつスパチャ (スーパーチャット/ Youtube の投げ銭システム) といった形の目に見える巨額のお金の動きなどから、「一攫千金」 を狙う有象無象の参入も相次ぎ、一部ではモラルや法を逸脱する様々なトラブルも生じています。

 加えて、いわゆる 「オタク的情緒」 からはやや離れるような人脈・コミュニケーション能力の有無ばかりが人気や数字に極端に直結するような状況 (コラボや 絡み合い、頂点付近の大手企業系 Vtuber と中間層の中小企業系 Vtuber、その多くが 底辺 となる個人 Vtuber とのカースト・ヒエラルキーの可視化、例えば上位者の下位者への マウント や、逆に下位者の上位者への媚びへつらい、先輩後輩関係の面倒くささ、馴れ合いウザ絡み、ファン同士の争いなど) も生じ、「ガワはアニメ風だけどやってることは リア充ウェイ系 そのものだ」 との忌避感が生じるケースも出始めています。

 もっともこれはこれで、自分がコミュニケーション能力に難があるので、創作物の 主人公 に対するそれと同じように、Vtuber が代わりに行ってくれているという形で評価する人も少なくありませんし、そもそも Vtuber ファンのすそ野が おたく の範囲を大きく超えたという証拠でもあるのですけれど。

 さらにガワとなるキャラもどこかの 絵師 (キャラの母親だとして 「ママ」 と呼びます) に外注、扱うテーマも流行りのゲームやボカロ曲の歌ってみたなど他 Vtuber と大差なく (これは権利上やむを得ない部分もあります)、大差ないわりに 「被った」「パクリだ」 との Vtuber やそのファン同士の争いが生じたり、異性との出会いを目的とする 直結 が増えたり、社会経験の乏しい演者が外注を巡る取り決めや 版権もの の取り扱いを誤って金銭トラブルが生じるなど、業界が未成熟なだけに様々なドロドロしたものが表に出たものだけでもたくさんあります。

 しかし Vtuber が存在しなかった時代に戻ることはないでしょうし、この先ブームが去っても、初音ミクで盛り上がったボーカロイドの世界のように、「あって当たり前」 の新しい文化のプラットフォームとして進化し続けるのでしょう。 2020年以降からは、成熟期に向かっていくのかもしれません。

Vtuber なんてネットを使ったキャバ嬢・ホストみたいなもん批判

 Vtuber が盛り上がるにつれ、あるいは高額スパチャの話題がニュースになるにつれ、「Vtuber なんてネットを使ったキャバ嬢・ホストみたいなもんだ」「視聴者は 非モテ の寂しいやつばかり」「仮想空間への逃避だ」「恋愛観を歪める」 といった、ありがちな批判をする人も増えてきました。

 こういった批判はアイドル業界や メイド喫茶 に対しても昔からありますし、一部には ガチ恋 なファンもいますし、そうした気分や目的を持ってファンをやっている人もいるのでしょうが、実際の配信を見ればほとんどのケースで雰囲気はかなり違います。 そもそも1対1の接客が基本で、店での会話やサービス以外の何らかの下心や期待感も込みのキャバクラやホストクラブの利用と、1対大勢の Vtuber (やアイドル・メイド など) とでは、演者も視聴者も関わる人の層や意識はかなり違います。

 こうした批判は、キャバ嬢・ホストといったいわゆる水商売・接客サービス業の人たちや、それに熱を上げる客への蔑視や侮蔑がベースにあり、「よくわからないけど楽しそうにしているやつら」 が気にくわないので罵倒するだけの、ためにする批判のような感じがします。

 もちろん一部でこうした需要を見込んでサービスを展開している事業者もいますが、いずれも Vtuber ブームの本流とはならず、あまり話題にもなっていません。 例えば Vtuber やアニメチックな 3D キャラがモニター越しに接客する飲食店なども登場しましたが、一部で話題になったに留まっています。 また Vtuber と1対1で話ができるネットサービスも広がることはありませんでした (例えば2019年12月からサービス開始した 「ユメノグラフィア」 は一定の評価を受けたものの想定していた成長ができず、2021年12月30日にサービスを終了しています)。 またこれらは料金設定といい、別にキャバやホストを強く意識したものでもありませんでした。 いずれ VR 技術が発達して、こうした需要と供給も広く社会に受け入れられるようになるのかなとも思いますが、現時点での Vtuber ブームに対する影響はほとんどないのが実情でしょう。

 そもそも Vtuber はあらゆるジャンル・テーマ・スタイルで膨大な数が活動しており、キャバ嬢・ホスト的な活動をしている人がいても、それはごく一部での話です。 またそれがことさらに批判されて当たり前の行為だとも思いません。 このあたりはそれなりに Vtuber の配信を見ていれば見当違いの意見だとわかるはずなので、実際に見ることもなく一方的な自分のイメージだけで批判しているのだと思いますが、新しい技術が生まれ発展するただ中にいて、触れることなく批判だけするのも寂しい行為だなぁなどと筆者などは感じてしまいます。 まあこういう斜めの見方をしていた人が偶然 Vtuber の配信を見て、そのまま ハマって しまったりするのも面白いところではありますが。

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(同人用語の基礎知識/ うっ!/ 2019年3月14日)
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